2005年 05月 03日 ( 1 )

仮名手本忠臣蔵 五・六段  (DVD)

またもや勘九郎箱です

十二月大歌舞伎の勘九郎最後の演目・「今昔桃太郎」もこのDVDで見てみました。
たぶん私が見に行った日に録画されたのではないかと思うのですが(ビデオが入ってますといってたし)、同じ演目をナマと録画で見た感想は――やっぱり映像は、ナマで見たときの興奮にはおっつかないもんかもしれない。
アップで見れるのとかは大変いいんですがね、
「あああっそこのところの弥十郎さんが見てーんだよ!犬が!」とか
「そこは引きでみたいんだーっ」とか
…ううん、私はいろいろ映像として残っている舞台を見て、よかっただのそうでもないだの言ってますが結構たわけた行為なのかもなーと思わずにも無し
やっぱり、歌舞伎座などその劇場の独特の匂いや、緊張感や、役者が実際そこで動いてるという高揚感に、いくら進化してもデジタルがかなうもんじゃないのかもな


…とかいいながらDVDでみたこの「仮名手本忠臣蔵」五・六段

非常ーにおもしろかったです。三大歌舞伎である「仮名手本忠臣蔵」「菅原伝授手習鑑」「義経千本桜」は、竹田出雲・並木千柳・三好松洛の三人が一七四六~八年にかけて、ほぼ一年間隔で生み出した歌舞伎の名作です。一年間隔ってすっげー…天才だなその三人は
古典ものって難しいんじゃないかしらんとミーハーな私は考えていましたが
古典がなぜ古典として残ったか、といえばそれが作品として面白いからに他ならないのだと思いました。面白ければ残る。伝統というのはそういう合理的なもんなんでしょうね。

私は以前仮名手本忠臣蔵の絵本を買いました
あの絵本はもう戸無瀬と小浪ちゃん(歌舞伎に出てくる人の名前は可愛くて美しくていいですな)の絵がことに絶品だと思ったので、勘九郎がお石、玉三郎が戸無瀬、勘太郎が小浪をやった2000年(かな?)の八段目を見られなかったのが悔しいわいのくやしいわいのぅと手拭いを噛みそうな気分だったですがいやはや、
勘平・勘九郎、おかる・玉三郎、おかや・上村吉弥という
この五・六段目もすごかったよ…勘平……(泣)

討ち入りに加われず、妻おかるの地元で猟師として日々をすごす勘平。そんな勘平をなんとか出世させてやりたいと、おかるは勘平に内緒で身を売ってお金を作ってやろうとします。そのお金を京の店から家に持ってかえる途中、おかるの父・与市兵衛は盗賊に殺されてしまう。しめしめと盗賊がニヤついているのを、猪を狙っていた勘平の鉄砲玉がこれまた殺してしまいます。
雨の夜のこと、顔も分からないけど人が死んでいるのを知り、「たいへんなことをしてしまった」と慌てる勘平ですが、つい出来心で盗賊が持っていた金を思わず持って帰ってしまうのでした―ー


くーっ、うまくできた話ですねえ、そして役者によって全然味わいが違いそうなお話でもある。
「わしゃもういきますぞえ」「いってしまいますぞえ」
「律義者と思うていたに、婿殿は鬼よ、蛇よッ」
「色に…ふけった、ばっかりに」
勘平が、ぱん!と手を合わせたあとチョン!と柝が入って幕。カッコよすぎ…ていうか泣ける…
なんて可哀想な一家だろう、忠臣蔵という物語はやっぱり英雄譚ではなくて悲劇なんじゃないだろうか

この話のかわいそうなところは、余市兵衛を殺したと、「もしかしたら」などの予断もなしに勘平が思い込んでしまっているところでしょうね。
ふだんはきっとおとなしくて優しいお婆さんだろうおかやがめちゃくちゃに勘平をなじり倒して、最後の最後で「それは間違いだった」ってことに気付くことの残酷さとか、おかるが「ととさんは病持ちだから気をつけてあげてください」という台詞の重さがとても生々しい。
髷のくずれた白塗りの顔に、ぴしゃっと血のついた手を塗ることの陰惨さ。
連判状に名前が載るくらいで救われるような重さじゃないよ…(泣)

おかやの上村吉弥さんと、勘平の勘九郎は実に熱演でした。夏祭浪花鑑の団七とはまた違った苦悩。それにしても、こう度々勘九郎の演技ばっかり見ていて良く私はあきないなと思うよ
そして斧定九郎が予想外に超かっこ良かった。「五十両……」の台詞しかないくせに存在感が重い。
足にあんな細い縄を引っ掛けられて引っ張られて、ああー痛そうーと思った。大変だなあ、役者さんは(そんなところで感嘆するのもどうかと思う)
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by lowoolong | 2005-05-03 00:34