シネマ歌舞伎「野田版鼠小僧」

なんだなんだなんだよおい 昨日今日と歌舞伎漬けです
昨日はお練りの後、新橋演舞場でえびさまをおがんできたし
今日は東劇でシネマ歌舞伎「野田版 鼠小僧」の観劇でございます
演舞場はまあちょっとおいといて。

c0022251_23401275.jpg

■「野田版鼠小僧」■ ~2月4日まで
「野田版研辰の討たれ」に続く、野田秀樹作・演出の歌舞伎第二作目。
あんなにパワー溢れるテンションの歌舞伎、いやさ芝居はなかなかみれるもんじゃありません(たぶん)。二千円〈前売りなら千八百円)で見れるんだから、とりあえず勘九郎が大嫌いとかじゃなければ観にいっといた方がいいです。ていうか東劇だけでやるってのがもったいなさすぎ。
「日ごろ歌舞伎の舞台に触れる機会の少ない全国の方々にも、広く歌舞伎をお楽しみいただきたいと願います」(byパンフレット)
ってバカ。歌舞伎座のすぐ近くの東劇単館上映で言えた台詞じゃねえや。
もちろんこれから地方上映スタートになるだろう。たぶん。

いやあまあ小理屈はさておいても、おんもしろかったああ!役者陣のテンションが高くって、みてるこっちが疲れそうなくらい(笑)
あんなに、椅子から浮き上がるほど笑ったり、手の平握り締めて見入ったり、そういう風に映画をみることってなかなかない。舞台を、サイッコーの特等席中の特等席で見た気分。
見事な映像です。見たいところに目が届く、というか。



「俺は施しをすると死んじまうんだあ」な棺桶屋三太〈勘九郎)はひょんなことで現実にあらわれた「鼠小僧」となってしまう、はてさて、慈悲深いと人気の御奉行大岡忠相のお裁きは?

金の亡者三太が可愛く見えるくらい、くせのある登場人物ばっかり!
三太の兄の遺産を継いだ與吉〈橋之助)はいい人の面を被った悪党で
貞女と噂の未亡人おたか〈福助)は大岡の妾にして與吉の恋人、
人気者の御奉行大岡(三津五郎)はお妾にめろめろな上、人気のためには平気な顔で非道もする。
おらん〈扇雀)とおたかの未亡人バトルや、一見とっても可憐なおしな(しちのすけ)が「男は金です!」と言い切っちゃう腹黒さやはじけっぷりがすてき。それにしてもおしなの新郎が醜男過ぎ(笑)
女形がとっても生き生きしてるのが、やっぱり現代に書かれた歌舞伎らしい。(演舞場の『御所五郎蔵』でちょっとむーっとしてたのですっきりしました)

・それにしても橋之助の色悪っぷりはちょっと見もの。に、に、にくたらしい!
・三津五郎さんは実にいいねえ、落ち込んで襖に手を突く(ようにと勘九郎が襖をおしやってあげる 笑)あたりの可愛さと、ラストあたりのいや~なかんじ。
・相変わらずわたしは福助丈にめろめろです。「うちのお店は二度も鼠小僧に入られたんですのよ、二度も二度も二度も二度も二度も!」あー、おたかに頭を撫でられたい、睨まれたい(倒錯)
・片岡孝太郎さんの、いかにも神経質な大岡の妻もよかった。「どう見たって、女ではありませんか!!」「…えーー…」の流れに大笑い。

さいしょっからもう笑いまくってましたが、しかしコメディからシリアスへの転換が実にいい。ここらへんは、研辰よりもスマートになってる気がする。研辰は「野田風歌舞伎」、鼠小僧は「歌舞伎風野田芝居」って感じがします。ッてなにもわかんねえ私がいえたものではないけど。
表情がアップで見れるってのもあるかもしれない。夏祭浪花鑑でも思ったけど、こと勘九郎の表情は本当にすっごいとおもいます。おちゃらけた笑顔も苦渋の顔も、訴えかけてくる熱がある。わたし、勘九郎の怒る演技が好きなのです。

「生まれてこねぇ方がよかったってェのか!!」

孤児さん太のことがちょっと気になる金の亡者三太。こういう“悪に徹しきれない小悪党”っていうのは言ってしまえばありがちなわけですが、そういう設定で人の感情を動かせるや、否や。
勘九郎の三太は、成功していると思いますね。感動しちゃったもの。

孤児さん太が、結局三太の命を懸けた大判小判に気付かなかったあたりの切なさ、
腹黒い人間ばっかりの中で浮いた感のある、ひたすらバカ正直な清吉〈勘太郎)が、結局三太を殺す道具になってしまう、という不条理感がたまりません。
「お前は実直な男だからなぁ…?」って、にくったらしいわー大岡ー!

「研辰」にも通じる、世間vsひとりの構図肩書きや価値の目まぐるしい転換ラストの切なさ(これに関しては研辰は長め、鼠小僧は短いという差がありますな。も少し余韻があってもなとは思ったけど)

やっぱり私、野田秀樹の作る芝居好きなのかもしれない。メルスのようなわかんねーけど熱い芝居も、わかりやすくかつ割り切れない芝居も。
勘九郎の柔軟さと野田秀樹の緩急のある演出、本。この二人のコラボは傑作ですね。よくぞまあ手を組んでくれたものだ。四代目小団次と黙阿弥の如し、とは勢い余って言いすぎでしょうが。毎月毎月これじゃ疲れるし飽きるけど、一年に一度くらいはこういう歌舞伎を書いてほしいなあ。
後に残るかどうかってのは、勘九郎でなければ三太も、研辰の辰三も出来ないんじゃねーかなーと思うので、いろいろ難しいものはありましょうがね。ていうか、このテンションで見事に間の合うこのメンバーだからいいのかも。
野田版歌舞伎は歌舞伎からずいぶん現代劇の方向へはみ出してる部分があるけど、それでも歌舞伎役者でなければこの芝居は出来ないだろうなあという微妙な感覚。伝統って難しい。

…ッと、考え込めばドツボにはまりますが、
お芝居自体は終わってほんとに「おっもしろかったーー!!」って素直に思えるものでした。浮世を忘れる、元気が出る、そんでもって結構深い、ザッツ・エンターテイメントでございます。
それにしてもまあ、勘九郎は悔しいくらいにエンターテイナーだな、こんちきしょ!
[PR]
by lowoolong | 2005-01-23 22:25 | 歌舞伎
<< 寿新春大歌舞伎  第十八代目中村勘三郎襲名披露お練り >>